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徳島県上勝町
競合産地に打ち勝ち、地域資源をお金に換える
    ―「彩(いろどり)の里・かみかつ」事業―

上勝町・勝浦郡農協上勝彩部会が「いっきゅうと彩の里」の取組みで平成6年度過疎地域活性化優良事例国土庁長官表彰受賞

<取組み>

女性や高齢者でも生産でき付加価値が高い「つまもの」が市場で優位に立てるよう、防災無線FAXやパソコンによる情報化を進めてきた。

<情報化のポイント>

競合産地よりも有利に地域資源をお金に換えるという、情報化を進める目的がハッキリしていたことと、地域資源をお金に換えるためには、それにまつわる情報を変えなければ、お金に変わらないことを理解し、実践したこと。


1.地域の概要・特性

人口(人)
世帯数(世帯)
面積(K平米)
高齢者比率(%)
若年者比率(%)
2,124
794
109.68
44.1
7.8

(1)地域の概要
 上勝町は、徳島県の中央やや南東寄りに位置し、県庁所在地の徳島市から約40km、路線バスで約2時間のところにある町である。
 上勝町は「いっきゅうと彩りの里・かみかつ」をキャッチフレーズに、まちづくりに取り組んできた。きっかけは平成3年度に町の基本構想、振興計画の策定で、まちの活性化とは「次代を担う若者定住」と位置づけ、その一環として「人づくり」「若者定住政策」「住環境の整備」に取り組んだ。その中で「人づくり」の取り組みとして、「強靱な問題解決能力を中心とした人間形成」を目標に「1Q塾」や「1Q運動会」などを開催している。
 1Q(いっきゅう)とは、町民が一休さんのように、問題(Question)を考え、知恵を使ったまちづくりを進めることを目指してつけられたフレーズである。1Q塾は、住民参加による「まちづくり1Q塾」、職員による「職員1Q塾」、39歳未満の若手や女性を必ずメンバーに加えた委員会による地区毎の「1Q運動会」が開かれている。「運動会」は、「地域の目標を定め、大勢の人々が頭脳と体力を使って行うまちづくり・地域間競技」の意味である。


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 また、このほか上勝町のまちづくりを特徴づける取り組みとして、第3セクターによる雇用創出と「彩(いろどり)」事業とがある。


(2)第3セクター
 次代を担う若者の定住を図るために、若者向けの職場の確保と農林業等への波及効果をねらって第3セクターを5社設立している。
 5社はいずれも地域資源の有効活用を目指して設立されたもので、5社合計で100人あまりの雇用の場を確保している。

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                       <つまもの百選>

(3)「彩」事業
 上勝町が言う「彩」とは、紅葉、柿、南天、椿の葉、梅・桜・桃の花など、料理のつまものに使う材料のことで、これを商品として販売している。他に松葉や稲穂などで作った祝膳用の飾り物や箸置き、食用の山野草、食用花などを出荷している。上勝町は以前から花木の産地であり、簡易なハウスで枝物を早く開花させ花市場に出荷していたが、JA職員がこれら小枝が料亭などの盛りつけ飾りに重宝されているという情報を得て、昭和61年から試験的に取り組みはじめた。これらの生産物は軽量であるが付加価値が高く、女性や高齢者でも容易に生産に携わることができることから、生産設備に大きな投資をすることなく地域に残った人たちだけでも十分対応可能となっている。当初は年間100万円程度だった出荷額も、現在では約200名の生産者で、年間2億円の規模にまで成長してきている。

 


2.情報化に向けた取り組みの経緯

 町が情報化に取り組んだのは、「彩」事業の産地情報・生産技術、販売情報の共有化を図る生産情報ネットワークシステムの構築である。
 「彩」事業への取り組みは昭和61年頃からだが、当初は紙や電話、FAXの受発注が中心だった。上勝町のつまものの出荷は、JAを通じて主に京阪神や首都圏の市場に出荷されるが、市場が望む少量多品種の品物をタイミング良く供給できる体制がとれるかどうかが、産地として生き残れるかどうかの鍵になっている。上勝町では、他の町よりも早く市場に出荷予約を入れると共に、急な発注にも対応できるようにと、平成4年から町の防災無線を活用した情報化に取り組んできた。
 具体的には、防災無線の同報FAX機能により、市場から来た注文を一斉に送付するようにした。それまでは対応できそうな人にその都度個別に電話やFAXで依頼していたが、
同報FAXを使うことによって、送付したFAXに対して対応可能な人から電話連絡が入るのを待つだけでよくなった。
 このように、既に産地として取り組み実績のあった「彩」事業において、市場のニーズに即応できる体制を築くために情報化に取り組んだのが実態である。現在は、同報FAXだけでなく、パソコンと公衆回線を使ったイントラネットを組み、受発注だけでなく、市況情報や市場動向、出荷情報、農作業情報、商品知識などの情報も提供できるようになっている。



<「彩」情報ネットワークシステム(同報FAX図)>


3.現在の情報化施策の内容

 防災無線を活用した仕組みは、FAXを使うことで、高齢者にとっても大きな抵抗なく成果を上げることができた。しかし、単純故に出来ることも限られており、情報の加工、ハンドリングという点では限界もあった。
 そこで、平成10年度にパソコンを使い「彩」事業で扱う農産物の販売を支援するための情報ネットワークシステムを構築し、産地間競争に打ち勝てるような投資を行うことにした。

 このシステムのポイントは、高齢者など、これまでパソコンに縁がなかった人にも、どうやって使ってもらえるようにしたか、という点にある。
 この解決には、ハード的にはパソコン設定のカスタマイズと、入力デバイスの改良を行うことで対応している。また、ソフト的には、パソコンを使って得られる情報が何を意味しているのか、そのデータを使って生産者自らがどのように行動すればよいのかを知ってもらう講習会をこまめに開催し対応した。
 「彩」情報ネットワークシステムの運用を実質的に推進しているのが第3セクターの「株式会社いろどり」である。(株)いろどりは、個性ある上勝町の農産物を安定した価格で取り引きしてもらえるよう企画、情報発信を行い売り込みを図ると共に、市場での評価や価格を有利に取引するために必要な様々な情報を、生産農家向けにわかりやすく加工提供する業務を行っている。
 具体的には、市場に対し、時期的にこれから必要になってくる商材の情報提供や活用の提案を行ったり、生産者向けに日々のデータ提供やデータ活用の講習会などを開催している。


4.情報化施策実施上の問題点

 平成11年度から通産省(現:経済産業省)から総額1億6000万円の補助事業を受け、システム構築を行った。情報化施策関連の投資額としては非常に少ないが、イントラネットシステムの構築に当たって公衆回線を利用したことで、インフラ部分への投資が最小ですんだことによるものである。
 住民の負担は、パソコンと(株)いろどりからの情報料などである。そのほか、公衆回線を使っているため別途電話代がかかる。負担額は、パソコン等の利用にあたっては利用者が年2万円を負担している。また、(株)いろどりが出荷額の5%を手数料として徴収している。


5.情報化施策の効果

 パソコンを使うことで、様々な情報提供が可能になり、情報の加工も可能になったが、その一方で、この機械にどのように慣れてもらうのかが、導入に当たっての一番のポイントになった。今まで使ったことがない人たちに使ってもらうには、パソコンはまだまだ参入障壁が高い機器である。
 そこで、上勝町が取り組んだのは、普通のパソコンのキーボードから入力するのではなく、トラックボール(マウスの玉の大型版)と数字のテンキーだけを抜き出したキーボードを特注し、入力のデバイスを変えることだった。高齢者でもわかりやすく、使いやすい入力装置を使うことで抵抗無く利用することができるようになったという。

 このほか、画面上でも地域イントラネットに接続して出てくるパソコンの画面で、文字にカーソルを当てると文字の色が変わり、カーソルがそこにあることが直感的にわかるように工夫している。
 また、ニュースなどのデータは毎日更新することで、頻繁にページを覗いてもらうような工夫も行っている。
 以上のような工夫の他に、イントラネットを通じて得られるデータの使い方、読み方の講習を積極的に行い、その情報が何を意味しているのか、その情報から何がわかるのかを生産者に対して講習を行っていった。


6.情報化施策の効果

 情報化を進めることで、つまもの産地としての上勝町に対する市場からの評価があがった。市場からの注文に迅速に応えると共に、市場に対して上勝町のつまものを使ってもらえるよう、新聞を作成し出荷する商品に折り込んだり、使い方の提案書を同封したりしている。このような市場開拓も「(株)いろどり」の重要な役割になっている。

 また、地域住民にとって使いやすいデバイスを開発し、情報の活用方法をこまめに教育することで、地域住民の情報リテラシーが向上した、といえる。市場から評価があがることで儲かるようになり、地域住民がやりがいを持って農作業に当たることが出来るようになった。「つまもの」というニッチ商品で、総額2億円の市場を創出したことで、特に女性や高齢者のやりがい興しにも役立っている。


 情報化の効果として強調できるのは、ここで流される情報が地域を動かす牽引役になっているという点である。地域の活性化には優れた地域リーダーの存在が不可欠であるが、このリーダー役を「(株)いろどり」から提供される情報が担っている。また情報の受け手側が情報を活かす教育講習を受けることで、情報をフルに活用することができ、情報が地域のやる気を引き出し、やる気を育てる牽引役を果たすことが可能となっている


7.今後の課題

 現在は、各家庭からパソコンを通じた情報化が進められている状況だが、今後は圃場の情報を提供できるような仕組みが必要と考えている。また、現在は市場を通じた取り引きになっているが、今後は市場を介さず、ホテルや料亭と直接取引をしていくことも検討課題と考えている。



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