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「どの地域にも必ず未来はある」
佐賀県多久市長 横尾 俊彦 
全国1804市町村の40.9%にあたる738市町村が過疎地域だ。日本の人口の8.4%で、面積では54.1%にあたる。つまり国土の半分以上が過疎地なのである。
過疎地域指定の要件は急激な人口減少、財政力指数0.42以下など。まさに厳しい環境にある自治体が過疎自治体で、それぞれ振興策を推進中である。だが未だに過疎脱却が叶わぬ地域が多いのが現実であるように思う。市町村合併しても過疎脱却に至らない状況も横たわっている。
●リメンバーKASO
極端な人口減少の例に、エネルギー政策転換による石炭産出地域からの人口流出がある。その打撃は大きかった。財政再建団体となった福岡県赤池町や北海道夕張市も旧産炭自治体であり、周辺にも厳しい財政の自治体がある。でもかつては日本の富国強兵・殖産興業を支えた地域である。
多久市も同様の経験がある。石炭産出と再建団体の経験だ。石炭最盛期には市立北部小学校の生徒数は全国有数といわれたし、多久駅構内では蒸気機関車が何台も往来していた。炭鉱に生命を懸けた人々の汗が高度経済成長を可能にした。しかし閉山。その後、地域は疲弊し、課題が残った。
直面したのは財政再建の問題。多久市は昭和30年代に体験した。当時の藤井市長は国会の石炭産業政策審議に参考人として意見を述べた。市OBは「鉛筆一本も自由に買えなかった」と回顧する。
だがその体験から、財政に手堅い気風が生まれた。歳入は控えめに見込み、決算での残余は基金に積む工夫だ。それは将来に少しでも余裕をとの思いからだった。
目に見えない課題もあった。石炭全盛期には、「鉱業会社が何でもしてくれる」という空気が地域にあったと聞く。その流れで今度は「役所が何とかしろ」と思いたい気持ちは理解できるが、現実には困難だ。商業も繁盛したが、「人口増依存で経営改革は希薄だったかもしれぬ」という回想もある。
そもそも依存体質は変革を遅らせる。依存意識を脱することが過疎問題克服には重要である。まして地方分権改革の時流の中、自治充実の取り組みが重要なだけに、地域の人々の自主自立の気概と自治体の経営改善努力が重要になる。それは最も重要な未来へのチャレンジともいえる。
しかし気になる流れもある。国政選挙に小選挙区・比例区制が導入され、政党も候補者も有権者の多い地域に注目しがちになりはしないかいうことだ。過疎地への理解不足が加速されると、国土保全も脆弱なものになるかもしれない。最近の土砂災害なども過疎地域の森林や山河を巻き込み発生しており、その対策もおざなりになるのではないかとさえ心配されるからだ。
一方では過疎地のもつ機能も広く知られるべきであると思う。都市住民の癒しやストレス発散、清らかな水や空気、安全な食糧などは過疎地域の野山や海川が可能にしてくれている。電気もそうだ。
さらに景観という魅力もある。先日、蒸気機関車の走る田舎風景に触れた。なんともなつかしい。日本の美しい風景が輝いていた。このような地域の景観も海外にもっと紹介するべきと思える。
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中国式の儀式「釈菜」
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地元中高生による「釈菜の舞」
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●「過疎という考え方がない……」!
かつて自治省を訪れたとき当時の財政局長から「欧州には過疎という言葉そのものがない」との話を伺った。非常に印象深く心に残っている。また地域活性化の専門家から、フランスの「どの地域にも未来はある。無いのは戦略やビジョンだ」という名言を聞いて、言い得て妙だと感じた。
いまの状況は、疲弊した地域を目の前にして、対処療法的な対策に留まっていないだろうか。戦略やビジョンをもっているだろうか。そのうち誰かが何とかしてくれるだろうという根拠のない依存心(甘え)を絶ち、難しいならせめて依存心を減らし、未来への夢やビジョンを描くことから始めるべきではないだろうか。子や孫に託す夢でこそ人はパワーを発揮するのだから。
●大きな夢への小さな積み重ね
多久市は、小さくともキラリと光るまちづくり、美しいまち多久の創造をめざしています。
佐賀県中央部にある文教の里です。来年に創建三百年を迎える孔子廟である多久聖廟があります。三世紀前に、時の領主・多久茂文が学校を建て、孔子廟の建立を思い立ちました。思えば、学問の興隆と、さらには人々の意識改革・良識育成などを強く願ったのだと感じます。それから300年間、孔子様をたたえる春秋の釈菜(せきさい)は連綿と続けられています。
孔子様の生誕地である中国山東省曲阜市とも友好都市交流として様々な交流を行ない、平成の時代になってからは中国につたわる孔子を賛美する「釈菜の舞」を導入し、腰鼓、獅子舞とともに市民にも親しまれながら披露しています。
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| 多久聖廟の「孔子像」 |
1708 年に建立された「多久聖廟」 |
さらに近年は、「論語カルタ」をつくって、学校で子供たちが親しみながら暗誦暗記するとともに、論語カルタ大会も行なっています。小学1年生から中学生までが、大人顔負けのスピードで論語カルタを競う姿は壮観です。保育園の一部でも論語暗唱が始まったようです。論語の言葉の詳しい理解は人生を積み上げながら行うとしても、まずは大事な言葉を身につけることから始めているのです。
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百人一首式の「論語カルタ」
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孔子の教えを学びながら競い合う
「論語カルタ大会」
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また漫画サザエさんの生みの親・長谷川町子先生も多久で誕生されました。このことは意外と知られていません。誰もが親しめ、家族愛や日常のあたたかさにあふれるサザエさんをはじめとした磯野家の姿は、人々が求める大事なものを伝え続けています。東京にある長谷川町子美術館の訪問者メッセージコーナーを見るだけでも、そのことがわかります。生誕地の御縁をもって、新たなまちづくり、心おこしのエネルギーにしたいと願っています。
産業面ではこの1年半で6社の企業を誘致できました。リース方式や特区方式などの工夫の成果です。定住促進策も4月から展開し、20家族を超える定住が確定し、問い合わせも続いています。
何事にも知恵と工夫だと思います。少しでも、わずかでも、できることから改善をして、よりよい地域づくりに、新たな行政経営の実現に、日々新たに努めたいと思っています。
(横尾多久市長は現在、地方分権改革推進委員会の委員としてご活躍中)
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